大森谷里山保全隊Rijin
大森谷里山保全隊Rijin
(兵庫県洲本市)
【 活動名称 】
地域の武器を作る
「竹原椎茸」 販売促進プロジェクト
大森谷里山保全隊Rijin
(兵庫県洲本市)
【 活動名称 】
地域の武器を作る
「竹原椎茸」 販売促進プロジェクト
▲ Rijin 谷口史朗さん、あわじ花山水 水野進さん、ドミノ・ピザ ジャパン 執行役員兼パートナーシップ部部長深澤勝
Q:この活動を始められた経緯を教えてください
▲ 「竹原原木椎茸」を手にとるRijin 谷口史朗さん
谷口:龍谷大学の授業の一環でフィールドワークがあり、ここ洲本市「竹原」集落にも通ってきていました。
ここは、里山の風景が残っている素敵なところです。この集落の賑わいをもたらしている一つが、原木椎茸の観光農園でした。
原木栽培とは、天然の木を用いて、木を伐採して、枯れた丸太に直接種菌を植え付けてきのこを栽培する栽培法です。この丸太を「ほだ木」といいます。
このほだ木には、くぬぎ、ならを使っていますが、里山まで行って木を切ってきたり、ほだ木に菌が回った後に水につける作業は重労働で、高齢化のため、2018年に廃業されました。
大阪で会社員を3年務めて、退職。地域おこし協力隊として洲本市で働いた後に、そのまま移住することにしました。
「竹原」は、学生の頃からのネットワークがあることも、決め手になりました。
原木椎茸は、菌床しいたけに比べて、肉厚で風味が良いことが特徴です。
原木椎茸の観光農園を復活することで、島の内外から人が訪れる、そのことで、「竹原」の認知があがることを願っています。
Q:産直ドミノ基金の助成金でどんなことをされますか
▲ 竹原原木椎茸観光農園の椎茸
谷口:助成金では大きく3つのことを目指しています。原木椎茸のほだ木を寝かす施設の設置、商品化に役立てる機械の導入、そして商品化です。
ほだ木に菌を入れて、採取できるまでには2年かかります。現在の施設で2500本のほだ木を安置できますが、観光農園を運営していくには、足りる量ではありません。新たにつくることで、プラスで3000本を収容できます。
椎茸を形よく育てる過程で、椎茸を間引くのですが、それを美味しく乾燥させる若しくは商品化のための真空パックをする機械の導入をしたいと思っています。そして、その商品を販売するための商品開発とパッケージデザインを進めています。
使途の制約が少なく、チャレンジができる助成金なので、すごく応援してもらえていると感じます。
Q:10月8日に竹原原木椎茸観光農園を再開!
▲ 谷口さんと深澤さん
谷口:今年10月8日に「竹原原木椎茸観光農園」を再開させることができました。既に廃業されていた農家の水野さんからノウハウを伝授していただき、継業させてもらいました。
ここまでスムーズに再開させることができたのも、100種類以上もある椎茸の菌の中から、この土地の気温や湿度、環境に適した、椎茸が美味しく育つ最適な菌を、経験から、教えていただいていて、今もアドバイスをいただけるお陰です。
再開からこれまでに、60-70人のお客様に椎茸狩りにきてもらえることができました。近くの幼稚園の子どもたちにも来てもらったのですが、売っている椎茸が嫌いな子どもでも、ここの原木椎茸を食べたとお母さんたちから聞きました。育っているところを見てもらい、椎茸狩りをして親しんでもらえることは大切だと思います。そして、島外からも足を運んでもらえる方もいらして、この観光農園がなければ、ここまで来ることはない方たちです。美味しい椎茸を通じて、「竹原」の名前を知ってもらい、この素晴らしい里山の自然が作る「竹原」ブランドの「原木椎茸」を世に発信していきたいと思います。
Q:今後の予定を教えてください
▲ 切り方と味付けの異なる椎茸チップスと乾燥椎茸
谷口:11月初めには、準備していた椎茸はすべて採り終わる予定です。
耕作放棄地になっていた畑には、完全無農薬の原木椎茸のほだ木を安置するハウスを建設中で、地域の方の協力をもらって自分たちで作りました。今、7割程度できたところで、11月には完成をめざしています。紅葉が終わるころになれば、くぬぎを森に切りに行く予定です。この里山の風景を守るためにも必要なことです。
乾燥した椎茸チップは商品化に向けて、いろんな味付けを試しているところです。また、竹原原木椎茸のロゴはカッコよくデザインできました。乾燥機か真空パックの機械を導入し、商品化と販売できる商品力を高めていきます。
原木椎茸ができるまでには、ふた夏かかります。竹原原木椎茸観光農園がますます賑わい、ここ「竹原」のブランドを広めていかれるように、挑戦は続きます。
▲ 建設中のほだ木を安置する施設
大森谷里山探検隊Rijin事務局
谷口 史朗(たにぐち ふみお)さん
▲ Rijin 谷口史朗さん
竹原集落は、人口3世帯6人のいわゆる限界集落で、地域住民の高齢化に伴い農地の担い手不足などの様々な地域課題に直面していました。
いつか地域のために仕事をしたいと思っていた想いを、大学生だった頃に、フィードワークの授業で通ってきていた地域で、叶えることができて、移住してきて3年になりました。
竹原集落で地域の特産品の原木椎茸を復活させることができて、まずは一歩達成できたと感じます。大学生のころは、京都でよくドミノのピザを食べていました。この助成金の初回の支援をもらえて、嬉しいです。
今後は、「竹原原木椎茸」のブランドを発信すると同時に、特産品が販売できるレベルにできるように、パッケージのデザインなども進めていきます。
現在も、龍谷大学の学生を受け入れています。若い学生たちが定期的に地域に通ってきて、農業の担い手となり、関係人口が生み出される構造が築けています。
今後も、都市部と農村の交流の仕組みをつくり、「竹原」の素敵な里山が守られるように、地域の活性化のためにつなげていきたいと思います。
りゅうのひげ会
りゅうのひげ会
(新潟県新潟市)
【 活動名称 】
伝統野菜で黄菊の畑ひろがる
産地づくり目指すを
地域活性事業
りゅうのひげ会
(新潟県新潟市)
【 活動名称 】
伝統野菜で黄菊の畑ひろがる
産地づくり目指すを
地域活性事業
▲ りゅうのひげ会 小倉壮平さん、長津正男さん、生産者の皆さん、ドミノ・ピザ ジャパン CEO マーティン・スティーンクス、COO ベン・オーボーン
Q:この活動を始められた経緯を教えてください
▲ 小倉さん(一番左)と長津さん(左から二人目)にレクチャーを受けながら、「りゅうのひげ」を収穫するマーティンとベン
小倉:2002年の冬に武蔵野美術大学の学生として、新潟市の岩室温泉のアートイベントに参加したのが、この地域との最初の出会いでした。その後、「新潟市岩室観光施設いわむろや」の館長のお話をいただき、12年前に移住してきました。
「りゅうのひげ」」のことは、その観光施設の館長をしていた時、地域の人から、毎年11月頃になると「昔、お殿様が好んだ美味しい菊があった」とたびたび聞くことあったのがきっかけです。
この地域に伝わる伝統食用菊を探したい、その菊をシンボルに温泉地観光を活性化させたい、そんな想いで探しました。
探し当てたのは、2013年の冬、ちょうど今日のような肌寒く雪交じりの雨が降るような日のことでした。近所の方の私有地に2株残っているのを見つけたのです。
それをお願いしていただき、自然栽培を専門とされる長津正男さんに託し、2年かけて復活させていただきました。2016年には、仲間を募集して4人でさらに株を増やす活動をスタート。2017年は他の食用菊の生産地の視察に行き、流通や加工を学びました。2019年にはグルメ&ダイニングスタイルショーに出展して、「りゅうのひげ」のPRに努めてきました。
Q:産直ドミノ基金の助成金でどんなことをされますか
小倉:「りゅうのひげ」を無事に復活させて、今では約10人の農家さんにご協力をいただきながら、600株にまで増やすことができています。次のステップを考えた時、この伝統食用菊を将来に向けて絶やさないためには、「りゅうのひげ」の流通と加工に本格的にチャレンジしたいと強く思っていました。助成金で目指しているのは、(1)すべての「りゅうのひげ」を売って収益にすること、(2)「りゅうのひげ」をレストランや生産者に知ってもらうこと、そして(3)「りゅうのひげ」生産にかかわるメンバーの後継を育てることです。
2017年に他の食用菊の生産地を視察して流通や加工について得た学びをこの助成金でいよいよ本格的にチャレンジしています。乾燥機の購入や販路拡大に向けた現地視察会等、やってみたいと思っていたことを実現に移していっています。
▲ 長津正男さんが栽培されている「りゅうのひげ」
産直ドミノ基金は、使途の制約が少なく、申請書類も煩雑ではないので、専従職員がいない私たちの活動にはとてもありがたかったです。「りゅうのひげ会」の取り組みは、小さな活動ですが、ドミノ・ピザのような大きな有名企業が支援してくださることで知名度も上がると思います。
Q:「りゅうのひげ」をどんな思いで栽培復活させてきましたか
▲ 「りゅうのひげ」を復活させた、りゅうのひげ会 生産部長の長津正男さん
長津:菊の栽培はずっとしてきたし、周りでもみんな作っています。しかし、この「りゅうのひげ」を見せてもらって、この香りと鮮やかな色に、こんな食用菊があったのかと衝撃を受けました。この地域の昭和一桁代の人には知られていますが、それ以降の世代は知らない伝統食用菊です。やっとの思いで小倉さんたちが見つけてくれた、大切な2株を預かったわけですが、実際に栽培してみると、とても繊細で戸惑いました。
しかし、昔からこの土地で愛された食用菊をなんとか復活させたいという想いで取り組んできました。こんな鮮やかな食材はほかに見当たらないので、貴重だと思います。この「りゅうのひげ」の栽培を、若い世代にも継いでほしいと願っています。
11月末から今年の「りゅうのひげ」を収穫!乾燥加工も改善!
小倉:「りゅうのひげ」は11月後半に最盛期を迎えます。収穫繁忙期は1週間で、フレッシュな食用菊が販売できるのはおよそ3週間ほどです。この伝統的食用菊を絶やさないためには、年間を通じた収益が得られる商品を作り、従事者を増やすことが必要です。
「りゅうのひげ」を加工した商品としては、寿司酢、佃煮、菊茶の3つを販売しています。寿司酢は、この地域のお殿様が昔、りゅうのひげをつかった菊ご飯を好まれたという言い伝えを聞いたので、最初に開発しました。
▲ 「りゅうのひげ」の寿司酢、佃煮、菊茶
▲ 乾燥した菊
グルメ&ダイニングスタイルショーに出展した時に、「菊を食べるのか。」と沢山の方に興味を示してもらいました。
「りゅうのひげ」は香り豊かで、色が鮮やかで、食感もとても良い食材です。また乾燥して菊茶としていただくことで目に効能があるとされているそうです。
産直ドミノ基金の助成金で、本格的な乾燥機を導入できたので、「乾燥菊」の商品化を進めていきたいと思っています。
視察を終えて
▲ 左から小倉さん、長津さん、マーティン、ベン
マーティン:地域の小さなプロジェクトを支えることはとても意義があります。地域は人が作るものです。ドミノ・ピザは、「ピザでつながる」をパーパスにしてビジネスを行っています。今日は、ここ新潟市西蒲区の岩室温泉で、「菊でつながる」コミュニティづくりに触れることができ、とても感銘を受けました。
ベン:2株しか残っていなかった食用菊を復活させよう。地域の活性化に活かそうというその高い目的意識に感動しました。チャレンジは人々から支持され、そしてハードワークは実るものです。
Q:今後の予定を教えてください
小倉:今回の新しい本格的な乾燥機を導入するまでは、家庭用の乾燥機を使っていたので、生産量に追い付かず、「りゅうのひげ」をすべて商品化することができず、フードロスも生んでしまっていました。この乾燥機でその問題も解決できます。
香りの特徴を活かして、京都のシェフから「りゅうのひげ」のシロップをつくってみようかというお引き合いをいただいています。収穫期が終われば都内のマルシェに出向いて商品の販売も行っていきます。
地域農産物の販売を促進し、「りゅうのひげ」生産にかかわる人の継続的なかかわりを可能にし、この地域が活性化できることを目指して、今後も活動を続けてまいります。
▲ 「りゅうのひげ」の乾燥機にかける小倉さんと長津さん
りゅうのひげ会 事務局
小倉 壮平(おぐら そおへい)さん
▲ マーティンとベンと一緒に「りゅうのひげ」を収穫する、りゅうのひげ会 小倉壮平さん
岩室温泉は弥彦・多宝山の山裾にあるなんだかホッとする小さな温泉地です。ここ新潟には四季があり農作物がとても美味しく、東京出身の私は豊かな食文化に魅了されていました。
そして、学生の頃からお世話になってきたこの地域の人たちとの思い出を振り返り、自分を頼りにしてもらえるなら恩返しをしようという気持ちもあり、移住してきました。
実は今、「りゅうのひげ」を育ててもらっているのは、月2回、農家レストランを開催した時にお世話になった農家のお母さん達です。地域のつながりを作りながら、活動ができています。
「りゅうのひげ」の花部分を採取することを「もぎる」と言います。「りゅうのひげ」の収穫は小さな子どもにも簡単にできるので、来年は子どもにも参加してもらって、「もぎるスピードコンテスト」を開催してみようかと思案しています。
次の世代を担う子どもに、「りゅうのひげ」に親しんでもらうことも伝統野菜を守るために必要なことだと思います。
また、お取引先を増やすことで、生産にかかわる人も増やし、作付面積を増やすこと。そして、この西蒲区の岩室温泉に、黄色一面の「りゅうのひげ」が咲き誇り、一面黄色の菊畑の写真を撮影して全国に発信していきたいです。